ALS患者の孤独
ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気をご存じですか?
ALS...色々な動作の脳への命令「運動ニューロン」が侵されてしまい、手、足、喉、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が痩せ細っていく病気
自律神経、知覚神経は侵されないので視覚、聴覚、内蔵機能は保たれる
このような特徴の通り筋肉が痩せ細って行くと食べ物をのみ込みにくくなったり、症状が進行して行くと呼吸も出来なくなります。
そうすると人工呼吸器をつけるかどうかの選択になります。
呼吸器をつけた場合...延命出来ますが、声は失い、五感は残ります。
呼吸器をつけなかった場合...亡くなる
もし、あなたがALS患者になった場合、人工呼吸器をつけるか、つけないか、どちらを選びますか?
生きたいから呼吸器をつけるという選択肢を選ぶ人が多いと思います。
しかし、呼吸器はつけたとしても、五感はあるのに体は動かせない状態のままなのでこのようなあらゆる行動が出来なくなります。
▼出来なくなる行動例
「外へ行く」「学校へ行く」「会社へ行く」
「歯磨きする」「お風呂へ入る」
「家族と話す」「友達と話す」
当たり前のような"普通"の生活が出来なくなる。
このような生活を送ってもあなたは生きたいと思いますか?
今、9200人のALS患者がいます。病気の原因は不明。治療法も不明。世界の呼吸器の装着率は1割。生きるのを諦め、呼吸器を拒否して亡くなるALS患者さんが多いのだそうです。
治療法が不明となるとALS患者の希望とはどこに残されているのか。
実はALS患者を救う救世主がいました。
吉藤 健太郎 /日本のロボット研究者
1987年生まれ。小学校5年~中学2年まで不登校。中学時代に「ロボフェスタ2001」関西大会準優勝。高校時代には車椅子開発で「JSEC」で文部科学大臣賞、世界大会「ISEF」でエンジニアリング部門3位を受賞。2009年より「孤独解消」をテーマにした分身ロボット開発に取り組む。2012年に株式会社オリィ研究所を設立。青年版国民栄誉賞「人間力大賞」、スタンフォード大学E-bootCamp日本代表、フォーブス誌「30 Under 30 2016ASIA」などを受賞。2019年には、遠隔コミュニケーションロボット『OriHime-D』による分身ロボットカフェ『Café DAWN(β)』を実験的にオープン、大きな反響を生んだ。
https://careerhack.en-japan.com/report/detail/1171より
様々なロボットコンクールで賞を取られている方です。
ALS患者を救うロボットを作りました。こちらです。
orihime
タブレット、スマートフォンとorihimeが繋がっています。orihimeを行きたい場所へ持っていくことでorihimeが見ている視点を見ることができ、ビデオ電話風に繋げることができます。
ビデオ電話との違いは何か、それは自分の代わりに身体表現が出来ること。
ALS患者は筋肉がやせ細ってしまっている為、身体表現が出来ません。視線入力による簡単な操作でこのような身体表現が出来ます。
テレビ電話とは異なる「操作者と同じ空間に一緒にいる」感覚が得られます。
◻️導入事例
①学校へ通う
病気、ケガで入院、精神的な理由での不登校など教室で授業を受けることかできない方でもorihimeを使って参加出来る。
②仕事をする
介護を必要としていて家での活動が難しい方でもorihimeを使って出勤出来る。
③国境を越えて友人の結婚式に参加する
大切な人の結婚式に参加することが難しくてもorihimeを出席させれば祝福することが出来ます。
身体問題や距離で行きたい所へ行けない人々が会いたい人、行きたい場所へ心で運べる移動手段があります
OriHime eye+Switch
またこちらは透明文字盤で目で会話できる意思伝達装置
メールやメモも書くことが出来ます。
▼使い方
https://orihime.orylab.com/eye/
このように外へ行かなくても行きたい場所へ行ける。話したい人と話せる。夢のようなものが誕生したのです。
何故作ることが出来たのか。
実はorihimeを作った吉藤さんは最初から特別な人ではありませんでした。
吉藤さんも天井を見る生活をしていた
ここから吉藤さんの過去話になります。
小学校の頃から折り紙を折るのが得意でした。
色々な折り紙を折っていたので学校の友達から人気でした。
しかし、小学5年生になると友達がいなくなりました。
思春期の頃なので、折り紙は子供っぽいと見られて距離を置かれてしまったのだそうです。
小5~中2まで不登校に。
布団に引きこもり天井を見上げる生活。
ベランダから飛び降りようとしたり、
気づいたら池にいて自殺を試みようとしたり、
自分が社会のお荷物になっているのを感じている日々を送っていました。
作ったことないのにロボットコンテストで優勝した
折り紙を折っている吉藤さんの様子を見た母親が、折り紙が折れるならロボットも作れるだろうと不登校の期間、虫型ロボット競技大会に誘ってくれたそうです。吉藤さんはロボット大会に参加しました。
その結果
なんと優勝しました。
次の年のロボットコンテストでも優勝
この時、学校の物づくりの巨匠「久保田憲司先生」に出会いました。
この先生の弟子になりたいと久保田憲司先生が勤める高校に入ると決意しました。
高校で車椅子を作った!
吉藤さんは工業高校へ入学しました。
入学直後、養護学校での学校交流会のボランティアをすすめられ参加しました。
上手く話せない子、ずっと笑っている子、多くの生徒が「車椅子」に座っていました。
皆で食事に行くことになったので車椅子を押しながら歩道を歩いてみたところ、その時、車椅子がこんなに不便なものだと知り衝撃を受けたそうです。
車体が傾いてしまうこと、段差を越えることが出来ないなど多くの問題点がありました。
車椅子に乗っている人は外にも自由に出られず、1週間の多くを安全だからと家にこもっていると考えると辛い...。吉藤さんは、新しい車椅子を作ろうと決意したのです。
朝早く学校へ行き23時まで学校に残り...の生活を繰り返しながら、工業高校の先生方や先輩と協力し、ようやく車椅子を完成することが出来ました。
その新しい車椅子の特徴は、タイヤの半分の大きさの段差を登ることが出来ます。
日本最大の科学コンテストに参加した
吉藤さんは、「JSEC2004」日本最大の科学コンテストで車椅子を出展しました。
高校生による自由研究のコンテストで優勝すれば世界大会の切符を手にすることができます。
他の高校は進学校ばかり。自分たちの作ったものでいいのだろうか。とずっと不安になってたそうです。
コンテストに出展した結果、
なんと文部科学大臣賞受賞
見事に世界大会へ進出。
「ISEF」でエンジニアリング部門3位を受賞しました。
吉藤さんを知って
orihime製作者の吉藤さんは最初から神童でも無く、不遇な学生時代で孤独を味わったことを知りました。
子供ってとても純粋で元気で沢山遊んでもいい時じゃないですか。子供の親も元気な子に育って行って欲しいと願っていると思います。
でも、子供の世界観は、自由に見えて狭いんです。学校と家庭というコミニュティしか無いのです。だから
周りと違うことをしたら距離を置かれてしまう
吉藤さんは、周りと違うだけで、
純粋な気持ち、義務教育の勉強、友達など大切なものを失って最終的に自殺も図ろうとしたのです。
色々な大切なものを失ったと考えると本当に吉藤さんは辛かったと思います。
自分が孤独だった時を他の人にはさせたくない強い気持ちがあってorihimeが出来た。
orihimeが出来て孤独な患者さんを救った
私はALS患者さんの孤独を救った吉藤さんにとても感謝しています。
最近の吉藤さんの活動
現在もALS患者さんをサポートする為、講演会を行ったり、本を出したりしています。
中でも気になったのが「分身ロボットカフェ」
ALS患者さんがorihimeを操作しながら接客をして働けるカフェを期間限定で開きました。
最後に
実は、私はALSという病気をつい最近知ったばばかりでした。なんとなく聞いた事がありましたが、がんのように有名な病気では無いので興味深く探ることも無かったです。
いつ誰にでも起きてもおかしくない原因不明の病気だということを知り、恐ろしさが一気に私に襲ってきました。
ALSを知って 今自分が生きている事がこんなに幸せなんだと感じました。
自分が健康に生きている裏で、病気で孤独を抱えた人がいることに気づかなかったのです。人間は1度は生きてる中で孤独を経験するのではないでしょうか。孤独とは人によって様々な見方があると思います。
例えば、「友達が0人」を孤独と見ている人もいますし、「孤独のグルメ」の番組のタイトルのように「1人でご飯を食べに行く事」が孤独だ。と考える人もいます。
さまざまな孤独の見方があると思いますが、「病気」での孤独はもっと辛いと思います。
病気になれば、寝たきりで人になにかしてあげられない。
むしろ大切な人に支えられて心配されてばかりで申し訳ない気持ちでいっぱいで辛くなると思います。
私は病気で孤独を抱えている人の存在を知って「孤独」という言葉を簡易に使わないようになりました。
最後に吉藤さんの言葉を紹介します。
人は、誰かに必要とされたい
必要としてくれる人がいて、必要とする人がいる限り、人は生きていける。
この素敵な言葉を聞いた時、私は大切な人をもっと愛してあげたいと思いました。
今、生きていることは本当に素晴らしいです。
皆さんも生きることを大事にして素敵な道を歩んで行ってください。
閲覧ありがとうございました。